研究講座

歯のホワイトニングB

  大阪歯科大学 歯科保存学講座

助手 白石 充

  (つづき)

オフィスブリーチおよびホームブリーチの術式

 

1.オフィスブリーチの術式 (35%過酸化水素水を用いる場合)

@ 術前の歯面清掃・ポリッシング(図1)

 漂白対象歯の歯冠部をロビンソンブラシで清掃したり,ポリッシングペーストにて研磨する.(この時,フッ素含有のポリッシングペーストの使用は避けた方がよいと言われる.)

A 歯肉保護(図2〜4)

 ブリーチ剤が付着しないように,ラバーダムあるいはブロックアウトレジンにより周囲の歯肉を保護する.さらに,粘膜部をワセリンなどで保護する.

 

 

B ブリーチ剤のパウダーと35%過酸化水素水を混和(図5)

  (松風ハイライトの場合は,過酸化水素水も付属)

C ブリーチ剤の歯面塗布(図6)

 筆などを用いて,エナメル質表面に約1〜2mmの厚さで塗布する.

D 光照射(図7)

 キセノン光源の照射器の場合には1歯につき約30〜60秒間,ハロゲン光源の場合には1歯につき約3分間光照射する.(松風ハイライトの場合,照射前のブリーチ剤は青色を呈するが,反応が進むにつれて白色に変わって行く.)

E ブリーチ剤を歯面から除去(図8)

 反応後のブリーチ剤を歯面から除去,綿球などで拭き取る.

*B〜Eを繰り返す

         1度の診療で,3回〜5回ほど繰り返す.

         繰り返す回数は,ブリーチ剤の種類や変色歯の程度によっても異なる.

 

F 術後の歯面清掃(図9,10)

 漂白終了後,ラバーダムやブロックアウトレジンなどを除去したのち,よく水洗し,フッ素含有の研磨剤を用いて歯面清掃,ポリッシングを行う.

 また,フッ素ジェルなどを併用し,漂白後のエナメル質表面の耐酸性向上を図る.

 

2.ホームブリーチの術式 (10%過酸化尿素を用いる場合)

@ カスタムトレー作製のための印象採得(図11)および模型作製

 

A 模型上の漂白対象歯の歯冠部にブリーチ剤が貯留する空隙(レザボア)を付与(図12)

 歯頸部より約0.5mm縁上で,厚さ1mm前後になるようにする.(最近では,この空隙を作る必要がないとされるものもある.)

B カスタムトレーの作製(図13〜15)

 薄いトレー用シート(厚さ1mm以下)をバキュームフォーマーなどを用いて模型に吸引,歯列に密着させる.デザインナイフなどを用いて模型からトレー部分を変形させないように注意して切り出し,歯列に合わせ形態修正する.

  カスタムトレーの試適

 実際に患者の口腔内に装着し,適合をチェックする.

 

D 術前の歯面清掃・ポリッシング(図1)

 オフィスブリーチの場合と同様,漂白対象歯の歯冠部をロビンソンブラシで清掃したり,ポリッシングペーストにて研磨する.

E 患者に対するブリーチ剤の使用説明および装着(図16)

 患者の目の前で,実際にブリーチ剤をトレーへ填入し,患者自身が自宅で使用出来るように指導する.

 また,実際に装着させたまま数10分間その状態で経過を観る.疼痛など異常がないことを確認する.

B      患者が自宅で使用

 1日の装着時間は,ホームブリーチ剤の種類や含有過酸化尿素の濃度によって,それぞれ異なるので注意する.(Nite White Excel の場合は,1日2時間)

G 経過観察

 漂白期間中は,数週間ごとに経過観察を行い,知覚過敏などの異常の有無,漂白効果の確認を行う.漂白期間の延長が必要である場合には,歯科医の判断で指導する.

 また,経過観察時に歯面清掃ならびにフッ素ジェルなどを使用する.

 

【ホームブリーチ剤の使用上注意】(Nite White Excelより)

●就寝時の装着は材料の誤飲を招くので行わないように十分に指導すること.

●知覚過敏症を誘発した場合,直ちに使用を中止し経過を観察すること.

●使用期間中は,着色の原因となる物(タバコ,コ−ヒ−,カレ−等)又は 酸性飲食物(コ−ラ等の炭酸飲料やレモンなど)の摂取は控えること.効果が出にくくなったり,脱灰作用を引き起こすことがある.

A       使用期限(外箱・ラベルに記載)を過ぎた製品は,使用しないこと.

 

 漂白終了後は,前回の『メインテナンス』の項で記載した点などを留意し,継続的に管理していくことが必要と考えます.

 

漂白効果は半永久的ではありません.しかし,歯質を切削していないからこそ再漂白も可能です.他の歯科治療と同じく,終了後の継続的なメインテナンスの必要性を漂白開始前ならびに漂白終了時に患者にしっかりと理解していただくことが重要です.

 

(おわり)