2010年診療報酬改定に対する 要求(案)

 

全国保険医団体連合会

 

 

2009年6月

 

 

【T】 改定要求の基本的考え方

 社会保険制度は、日本国憲法第25条の理念を具体化したものであり、患者・国民にとっては社会保障としての医療を受ける権利と給付内容を規定するものが医療保険制度である。この医療保険制度を支える医療従事者の待遇改善や設備更新に必要な経営の原資となるものが診療報酬である。
 しかし、現在の診療報酬は、医療機関の健全経営を維持する点からも、患者・国民の医療を受ける権利を保障する面においても不十分である。
 これは、欧米諸国に比べて技術料が全般的に低くおさえられていることや、GDPに占める医療費の割合も歴史的に低い水準であった上に、1980年代以降特に顕著になった政府の医療費抑制策の結果である。その上、2001年からの小泉「構造改革」によって、更なる医療費の抑制策が推し進められ、国民皆保険は空洞化している。
 2002年からの4回連続のマイナス改定は、厚生労働省が発表した改定率(2002年▲2.7%、2004年▲1.05%、2006年▲3.16%、2008年▲0.82%)でもマイナス7.53%(2001年対比)となり、これを元に戻すためには8.14%(100/(97.3%×98.95%×96.84%×99.18%)=100/92.47=1.0814=8.14%)の引き上げが必要となるが、この間の改定による影響は、厚生労働省が公表した改定率よりもさらに大きい。
 構造「改革」と未曾有の世界的経済危機によって国民生活は大変な危機に瀕している。いまこそ社会保障を守り、改善することが非常に重要である。
 医療分野では、医療崩壊を食い止め、必要な医療を提供することが必要である。こうしたことから、2010年診療報酬改定にあたり、10%以上の診療報酬引き上げを行うことを要求するとともに、政府・財界が進める公的保険の範囲縮小と医療費の削減、患者負担増大の道ではなく、医療保険制度を充実し、「いつでも、どこでも、誰でもが、必要な医療を受けられる」診療報酬体系にすることを強く要求するものである。
 なお、改定による財源は、国庫負担と企業負担を増やして捻出し、消費税率の引き上げや被保険者の保険料引き上げによらないよう、強く要求する。
 また、相次ぐ窓口負担率の引き上げによって、患者の受診が抑制されている。先進国の中では患者一部負担は無料のところが多く、日本の患者負担は比較すると一番高い。
 私たちは、診療報酬の引き上げ・改善とあわせて、患者負担の引き下げを求めるが、当面、2008年度改定とあわせ、下記の点の実現を強く求めるものである。

(1)

 国庫負担と企業負担を増やして、医療保険の患者負担割合を次の通りとすること。

  @

 医科は就学前まで、歯科は義務教育終了までの子どもの負担を、無料とすること。

  A

 70歳未満の健保・国保の患者負担割合を、2割に引き下げること。

  B

 高齢者の患者負担は、外来は1割定率かつ月額1000円上限か、1回500円月2回までの定額制の選択制、入院における負担は1日700円とすること。

  C  国庫負担を増やして国保保険料を引き下げること。国保資格証明書の交付をやめ、全ての国保加入者に正規の保険証を交付すること。
(2)

 ホテルコスト、食事、180日超入院などを保険給付に戻すとともに、維持期リハビリテーションなどの新たな保険給付外し・介護保険給付化を行わないこと。

(3) 

 患者負担を増大させ、患者から医療を受ける権利を奪う混合診療拡大を行わないこと。選定療養について、必要に応じて保険給付対象とするかどうか検討すること。

(4)   介護療養型医療施設の廃止を撤回し、必要な医療と介護が提供できる施設として今後とも評価すること。また、介護療養型老人保健施設については、医療機能を強化した上で、従来型老人保健施設からの転換を認めること。
  2002 2004 2006 2008 合 計
改定率 2.70 1.05 3.16 0.82 7.73
2001年対比 2.70 3.72 3.72 6.76 7.53
2002年以前に戻すためには、=100/97.3%×98.95%×96.84%×99.18%)=100/92.471.08148.14

【U】2010年度診療報酬改定に対する医科・歯科基本要求

 2010年の診療報酬改定にあたっては、少なくとも10%以上の診療報酬引き上げを行うこと。改定による財源は、国庫負担と企業負担を増やして捻出し、消費税率の引き上げや被保険者の保険料引き上げによらないこと。

(理由)

 小泉構造「改革」による診療報酬の引き下げや給付制限の導入で、必要な医療の提供すら阻害されている。2008年改定では、小泉構造「改革」による負の遺産を断ち切り、必要な医療が公的医療保険で提供できる出発点とすることを目的とし、小泉政権下での4回のマイナス改定(2002年▲2.7%、2004年▲1.05%、2006年▲3.16%、2008年▲0.82%)を取り戻し、必要な医療を提供できるようにするため、10%以上の引き上げを行うべきである。
 なお、国民医療費は33.1兆円(2006年度)であり、10%の引き上げによって、国民医療費は3.31兆円引きあがることとなるが、これらは消費されてなくなるものではない。
 平成20年版厚生労働白書では、医療経済研究機構報告書(2004年度版)に基づいて社会保障分野の経済波及効果(産業連関表による総波及効果)を紹介しているが、これによれば医療は、4.2635で、全産業平均(4.0671)よりも大きく、雇用誘発係数も主要産業56部門中15位と高い。
 また、総務省ホームページに掲載されている「経済波及効果分析シート」に診療報酬を10%引き上げたと仮定して3兆3100億円を投入すると、経済波及効果は、約1.68倍の5兆5500億円(直接効果3.31兆円+経済波及2.24兆円)となる。
 総務省統計局ホームページ http://www.stat.go.jp/data/io/system.htm
 国民の命と健康を守る点からも、内需拡大の観点からも診療報酬の大幅引き上げが求められている。

 医師の基礎的技術料を評価し、医科・歯科とも初診料を300点に、再診料を100点に引き上げること。また、認知症患者に対する対応の評価を加算として評価すること。

(理由)

 医療崩壊を食い止めるためには、地域医療を支える開業医、中小病院を含めた全ての医療機関の診療報酬を引き上げることが重要である。診察の費用として初診時3,000円、再診時1,000円は、最低限の要求であり、現行点数は基礎的技術料としてはあまりにも低すぎる。
 また、認知症患者に対する診察には、他の患者に比べても手間がかかることから、乳幼児加算と同等の評価の加算を新設すべきである。

 医科の外来管理加算への時間要件導入等を廃止し、2008年改定前の要件に戻すこと。また、外来管理加算より高い処置等については外来管理加算を算定せず、再診料+処置料等を算定するが、外来管理加算未満の処置の場合は、再診料+外来管理加算を算定する方式に改めること。なお、眼科や耳鼻科検査を実施しても、そのことで外来管理加算が算定できない扱いは廃止すること。

(理由)

 外来管理加算は、処置等を実施することがないため外科系医療機関に比べて診療報酬上の評価が低かった内科系医療機関の再診料を補填する目的でつくられた「内科再診料」がもとである。その後、名称が「外来管理加算」に変更されたが、診療報酬抑制政策のもとで、内科系医療機関の報酬を補填する意味合いは薄れ、実際には再診料を低く抑えるために利用し、「外来管理加算」がなければ、開業医や中小病院の経営を支えることはできない状況におかれている。
 2008年改定で、@問診と身体診察を行い、患者に症状や療養上の注意点を説明し、要点を診療録に記載する、A概ね5分を超えて直接診察を行い、診療録に時間要件に該当する旨を記載することが算定要件に追加されたが、これらを外来管理加算の算定要件にすることは、外来管理加算を医療費抑制に利用してきた行為を覆い隠すものである。
 しかも、産科や小児科、病院勤務医対策が2008年改定の目玉であるにもかかわらず、外来管理加算への時間要件等の導入によって、小児科や200床未満の病院でも大きな影響を受けており、このままでは、地域医療が崩壊してしまう。
 早急に外来管理加算への時間要件導入等を廃止し、改定前の要件に戻すべきである。あわせて、処置等を行った場合に算定点数が低くなる不合理についても解消すべきである。

 勤務医の厳しい労働環境を改善するために、地域の第一線医療を担う診療所や中小病院がこれまで担ってきた役割を正当に評価し、すべての医療機関の診療報酬を引き上げること。また、勤務医の厳しい労働環境を改善するため、入院点数等の引き上げを行うこと。

(理由)

 2008年改定では、勤務医の厳しい労働条件を引き合いに出して開業医や中小病院の診療報酬が大幅に削られた結果、地域医療を支えている開業医や中小病院が厳しい経営におかれた。また、大病院を含めて勤務医対策は全く不十分である。このままでは、地域医療を支えきれなくなることから、次回改定にあたっては、地域医療を支えるすべての医療機関の診療報酬を引き上げるべきである。

 必要な医療は、医療保険で最後まで提供することを基本とし、「公的医療保険で賄う範囲の縮小」を行わないこと。また、医療を介護保険給付にしないこと。

 (1)  リハビリテーション料の算定制限を廃止し、個々の患者の必要性に応じてリハビリ医療ができるようにし、維持期リハビリについても算定制限を設けず医療保険で給付すること。
(理由)

 そもそも維持期を含めてリハビリは、医師が指示するOT・PT・ST等の専門職種による医療行為であり、患者の病態に応じて医療保険から給付されるべきである。また、介護保険のリハビリは、原則として区分支給限度額の枠内で、ケアプランに基づき実施するものであり、必要性があっても、実施できない場合が少なくない。介護保険にリハビリをもっていくことは、患者に必要な医療を提供するという健康保険法の現物給付原則に反するものである。必要なリハビリは医療保険で給付することとし、リハビリの算定日数上限は撤廃すべきである。

 (2)  180日超入院の保険給付外しや、一般病床に90日を超えて入院している高齢患者(「特定患者」)の取り扱いなど、日数による入院医療の制限をやめ、必要な医療の提供を公的医療保険で保障すること。
(理由)

 財界からは、「保険給付対象や日数等の直接的な制限」、「保険外併用療養費の拡大」など、あらゆる手段を通じて保険給付範囲の制限と患者負担化が求められており、維持期リハビリの算定制限、180日超入院など、治療が必要であるにもかかわらず、医療保険給付が打ち切られる状態となっている。これは、健康保険法に規定された「療養の給付」の概念を根底から覆すものである。

 (3)

 歯科について、治療の一環として行われる歯周病管理について、病状や管理日数期間によって保険給付から外し患者の自費扱いとするような保険給付制限は行わないこと。

(理由)

 歯科の慢性病である歯周病について、安定期の管理に関して病態や管理期間によって保険給付を制限するような検討が進められているが、患者に必要とされる医療は保険給付として提供すべきである。

 (4)

 安全性や有効性が確認された新医療技術を速やかに保険に導入し、保険の適用範囲を拡大すること。

(理由)

 安全性や有効性が確認された新医療技術は、国民が速やかに受けられるようにすべきである。

 (5)  光熱水費を保険外とした入院時生活療養費を廃止し、保険給付に戻すこと。
(理由)

 光熱水費を保険外とした入院時生活療養費は廃止し、保険給付に戻すべきである。

 (6)  介護保険給付サービスのうち、医療系サービスは医療保険給付に戻すこと。
 (7)

 必要に応じて医療保険と介護保険の給付が受けられるようにするために、診療報酬の算定方法(厚生労働大臣告示第59号・平成20年3月5日)の第6号の規定を削除し、医療保険と介護保険の給付調整(要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額が算定できる場合〔厚生労働大臣告示第128号・平成20年3月27日〕)を廃止すること。

(理由)

 医療は、医療保険によって提供されるべきであり、居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、短期入所療養介護・介護老人保健施設・介護療養型医療施設における医療サービスを医療保険給付に戻すべきである。

 療養病床廃止・削減計画をやめ、必要な医療が提供できるよう、医療区分を廃止し、療養病床の診療報酬を引き上げること。

(理由)

 医療区分に医学的な根拠はなく、報酬格差を導入することで必要な医療が受けられない事態となっている。療養病床において必要な医療が提供できるようにすべきである。

 患者への医療制限、不合理を改善すること。

 (1)

 高齢者が受けられる医療を制限する後期高齢者診療料や後期高齢者終末期相談支援料等を廃止し、高齢者の診療報酬を一般患者の診療報酬と区分しないこと。

(理由)

 後期高齢者診療料や後期高齢者終末期相談支援料等は、医療費抑制の観点から、高齢者の医療提供の場を入院医療から居宅に転換し、病院には病床削減を、開業医には労働強化を押し付け、患者から必要な医療を奪うものである。後期高齢者の医療を差別することは、その生命を軽んじることにほかならない。公的医療保険制度を導入していながら診療報酬を年齢によって切り分けている国はない。

 (2)

 「脳卒中の後遺症患者」及び「認知症患者」の入院を制限しないこと。

(理由)

  脳卒中の後遺症や認知症に起因する場合の方が、医療ニーズが低いという根拠は乏しい。脳卒中後遺症や認知症を一律に差別的に対象から除外せず、脳卒中後遺症や認知症であっても重度の肢体不自由、重度の障害、重度の意識障害であれば、現行どおり対象とすること。

 (3)

 歯科の医学管理料における文書提供義務化を撤廃すること。診療上の必要性により文書提供を行なった場合は、文書提供料を別途設定すること。

(理由)

 歯科の医学管理における文書提供は、毎回の文書作成に追われ歯科医師と患者の対面時間を削ぎ、患者への十分な説明時間にも支障をきたすなど本来必要とされる歯科診療への専念を困難にしている。

 (4)  個別の費用ごとに区分して記載した領収書発行の義務化を撤回すること。
(理由)

  医療機関は、「医療」の内容について患者に説明する義務があるが、政府が決めた複雑で説明が困難な「医療費」の内容・仕組みを患者に説明する義務はない。医療機関が「個別の費用ごとに区分して記載」した領収証を患者に渡すことによって、その患者が自分の治療を理解し、患者と医師との信頼関係が深まることにはなりえない。

 (5)  基本診療料への処置料の包括をやめ、必要に応じて実施した処置が算定できるようにすること。
(理由)

 実施した処置を正当に評価すべきであり、2008年改定で基本診療料に包括した熱傷処置、皮膚科軟膏処置、湿布処置、眼処置、耳処置、鼻処置を元に戻すこと。

 全ての医療従事者の技術と労働、医療安全管理を含めて医療提供にかかる諸費用を診療報酬で正当に評価すること。

(理由)

 医療安全管理に配慮し、質の高い保険診療を提供するためにも、全ての医療従事者の技術と労働、医療材料や医療安全管理、保険請求のための費用など、医療提供のコストを正当に評価することが必要である。

 医療提供のためにかかる全ての諸費用を正当に評価するよう、所謂「出来高払い」を原則とすること。包括する場合は、その積算根拠を示すこと。

(理由)

 医療提供にかかる全ての諸費用を正当に評価した点数であることが当然必要であり、そのことが万人に理解できるためには、積算根拠がわかるものでなければならない。

10

 点数項目の算定制限は、全て自院による取扱いとし、他医療機関との併算定を禁止する制限は撤廃すること。

(理由)

 併算定禁止によって、患者のフリーアクセスが制限される。また、自院の責任によらない内容についても制限を設けることは医療機関のみならず、患者に対しても不利益が生じる。

11

 病床規模や平均在院日数など、根拠の乏しい指標に基づく点数格差をなくすこと。

(理由)

 病床規模によって再診料や指導料等に格差が設けられているが、病床規模とこれらの点数に格差を設けることには、根拠がない。また、平均在院日数を入院基本料の届出の要件とすることは不合理である。

12

(1)

 

(2)

 施設基準について
 「施設基準の届出」を要する医療は、人員や施設に規定を設けなければ患者への影響が大きいものに限定すること。また、院内掲示の義務付けは、名称のみとすること。
医療機能評価、民間保険加入要件、選定療養の実施を施設基準の要件とした取扱いを止めること。

(理由)

 患者への影響がない届出は、廃止すべきである。また、「患者が受けられるサービス等がわかる内容」の院内掲示は、医療機関側が患者に伝えたい内容を患者にわかりやすい方法で行うことが望ましい。したがって、届出したサービス内容については、任意とし、届出毎に患者が受けられるサービス等がわかるよう、閲覧可能な状態にした帳票でも可とすべきである。
 また、次の内容が施設基準の要件となっているが、これらはいずれも治療を適切に提供できるか否かを判断する基準に用いるべきものではなく、要件から外すこと。
○医療機能評価(ISO、日本医療機能評価能) 緩和ケア診療加算、緩和ケア病棟入院料
○民間保険加入要件 ハイリスク分娩・妊娠加算
○選定療養の届出・実費徴収 入院時医学管理加算
※医師事務補助体制加算・ハイリスク分娩加算は、施設基準の要件ではないが、提出が求められる資料に記載項目がある。

13

 介護保険施設等入所者の医療の算定制限を撤廃すること。

(理由)

 介護保険施設等入所者に対する医療の制限は、急性増悪などの必要な医療の提供すら阻害してしまう事例もあり、こうした算定制限は、廃止すべきである。

14

 社会保障の原則である公平性、平等性の観点から、診療報酬点数表や1点単価に都道府県格差を導入しないこと。

(理由)

 保険財政や医療費適正化計画の数値目標の達成状況により、都道府県別の診療報酬の特例を定めることができるようにしようとしているが、社会保障の原則である公平性、平等性の観点から、これらの導入をすべきではない。

15

 ガイドラインや認定医資格を診療報酬の算定要件に入れないこと。

(理由)

 ガイドラインは、当該検査や治療を実施する上での学会等における検討の現時点での到達点を示したものであるが、必ずしも全ての患者に当てはまるものではなく、ガイドラインを点数の算定要件とすべきではない。また、認定医・専門医資格を診療報酬の算定要件とすべきではない。

16

 薬価・材料価格にメスを入れ、正当な薬価・材料価格に引き下げること。その際、購入価格が薬価・材料価格を上回らないようにすること。

(理由)

 医療費上昇の原因の一つに諸外国に比べ格段に高い薬剤・材料価格があるため、市場流通価格による薬価・材料価格の決定方式を是正し、原価が反映できる方式に改めること。

17

 診療報酬の請求をオンラインによる方法に限定しないこと。また、医師の裁量権を否定し、画一的医療に導く可能性のあるオンラインシステムの導入を凍結し、内容を再検討すること。

(理由)

 診療報酬のオンライン請求義務付けは、地域医療の崩壊をもたらすとともに患者さんのプライバシー保護の点からも重大な問題である。また、メーカー利益誘導と社会保障個人管理システム化の恐れがある。オンライン請求に限定せず、紙媒体での請求を今後とも認めるとともに、オンラインシステムそのものについても、再検討すべきである。

18

 検証部会の結果等で通常の改定時期でない時期に、国民に必要な医療を提供するため再改定を行なう場合は、必要な医療を提供するための財源を確保して実施すること。

(理由)

 2006年改定では、疾患別リハビリテーションに日数制限が導入され、必要なリハビリテーションが受けられない事態が相次いだ。リハビリテーション日数制限撤廃を求める国民的な運動の中で中医協は、再改定を決定したが、「財政中立」のもとで行なわれたため、逓減制が導入され、この結果、多くの医療機関で再改定前より経営が悪化しており、必要なリハビリテーションの提供が困難になった。国民に必要な医療を提供するための再改定であったはずなのに、再改定の結果は、そうはなっていない。「財政中立」を前提とするのではなく、必要な医療を提供するための財源を確保すべきである。

19

 2010年診療報酬改定にあたっては、中医協公聴会を複数個所で開催するとともに、正式にパブリックコメントを募集し、寄せられた意見に対する考え方を示すこと。

(理由)

 2006年改定、2008年改定とも、公聴会は1回のみの開催で、改定意見についても募集期間が短く、かつ寄せられた個々の意見に対する考え方も、示されなかった。2010年改定にあたっては、公聴会を複数個所以上で実施するとともに、正式なパブリックコメントとして改定意見の募集期間を1カ月以上設け、寄せられた意見に対する考え方を示すべきである。

20

 診療報酬改定にあたっては、患者や医療機関に負担を押し付けて大混乱を生じることのないよう、官報告示から実施までの周知期間を少なくとも3か月以上設け、少なくとも1カ月以上前には通知を出し、新点数の算定開始日までに不明確な解釈を残さないようにすること。

(理由)

  診療報酬改定の告示は2月に出され、通知は3月中旬に出される事態が続いており、改定内容が周知されないまま、4月改定が実施されている。これは、何よりも患者にとって不利益であり、医療の現場に大混乱をもたらすものである。そのしわ寄せは、医療機関と患者に押し付けられている。こうした事態にならないよう、少なくとも1か月以上前には、関連通知が示されるべきである。

【3】医科の具体要求(略)

【4】歯科の具体要求

● はじめに

 

 歯科診療報酬は低診療報酬政策を基調とした改定が繰り返されたことから、基礎的技術料の多くが長期にわたり引き上げられず、また、医学的根拠もなく個々の治療行為が包括されることで実質点数の引き下げに利用されてきた。更に歯科診療報酬に特徴的な安価な定額評価による患者の長期管理を、歯科医療機関に課す診療報酬の体系が改定のたびに新規に試みられてきた。2000年4月の「かかりつけ歯科医初診料」、2006年4月「歯科疾患総合指導料」などいずれも臨床の現場には受け入れられず廃止に追い込まれたが、08年4月改定では「歯科疾患管理料」の名称で再度、長期継続管理の体系が導入(新設)された。
 08年4月改定では、長期に据え置かれてきた基礎的技術料の一部の改善はあったが多くは据え置かれ、新たな包括の拡大による点数引き下げが行われたため、医療経営の危機は更に加速された。歯科医療機関の経営逼迫の結果、歯科従事者の雇用も不安定になり歯科衛生士学校や歯科技工士学校では入学者の定員割れが生じ、これらの歯科医療従事者の確保が一層困難になるなど深刻な事態が進行している。
 歯科技工所(士)の状況はより深刻で、離職者の増加に歯止めがかからないなど国内の歯科技工体制の崩壊が始まっている。
 08年4月改定では、医科に比べて著しく遅れていた新規技術の導入がおこなわれたが、その評価は極めて低く普及が困難で、導入された新規技術の恩恵を患者が受けられないという矛盾が生じている。
 以上のように、今日の歯科医療崩壊に歯止めがかからない最大の原因は、歯科の低診療報酬政策にあり、健全な歯科医療経営を確立するためには、医科と歯科の格差を是正し、歯科医療費の適正な引き上げが不可欠の条件である。このため、新規技術の普及をはじめ、歯科医療の質の確保と安全を保障し、歯科医療の崩壊を食い止めるために以下の基本要求を明確にするとともにその具体化としての重点要求の実現を求めるものである。

● 歯科診療報酬点数表全般を通じての基本要求

1

 混合診療(保険外併用療養費)の拡大や補綴の保険給付外しは行わず、「保険の給付範囲を拡大」してほしいという患者の歯科医療への強い願いを実現すること。
 新規技術の保険導入に当たっては、不採算での導入であってはならない。評価基準を明確にして適正な点数評価で実施すること。

(理由)

  歯科医療に対する患者の一貫した強い要望は「保険の給付範囲を拡げて欲しい」である。歯科では日常の治療でも保険の利かない技術、材料があり、このことが患者の歯科受診を遠ざけ、早期発見、早期治療を阻害し、また、治療の中断を招いている。安全で質の高い歯科治療を受けたいという患者の要望に積極的に応えられるよう、例えば、小臼歯への前装鋳造冠や金属床総義歯など安全性も確保され、充分普及している技術、材料は直ちに保険に導入すること。
 また、医科に比べて著しく遅れている新規技術の保険導入を図ることが歯科の保険医療に関しては緊急の課題となっている。すでに評価療養、選定療養に分類されている技術、更にどちらにも現在分類されていない技術についても安全が確保され、普及している技術については直ちに保険導入を検討すること。08年4月改定では新規技術の導入が行われたが、評価が著しく低いため医療機関では積極的な活用が困難になっている、このため、新規技術の導入に当たっては医療機関が積極的に活用できるよう適切な評価で導入すること。

 5つの指導管理料を歯科疾患管理料に統合したが、これは本来、全ての疾患は年齢、病態等、一人ひとり指導管理がまったく異なっている歯科医療の本質を無視したものであり、患者に対する十分な指導管理が行えないなど、歯科の臨床の実際とも矛盾が生じている。歯科疾患管理料は廃止し、医学管理のあり方を抜本的に改善すること。

(理由)

 

  口腔を1単位ととらえ、再発防止・重症化予防のための継続管理の評価として、歯科疾患管理料にこれまでの5つの指導管理料を統合した。しかし、これまでも歯科医師は口腔を1単位としてとらえ、治療計画・指導を立案、患者の毎回の全身状態、生活習慣等を勘案し協調しながら診療を行ってきている。また、小児から老人という年齢層における疾患に係る特徴、重視すべき治療、指導・管理内容はそれぞれ異なる。こうした医療の個別性、特殊性に柔軟に対応できる指導管理料に抜本的に改善することが必要である。患者の自署、初診から1月以内の算定、2回目以降の評価の引き下げ、月1回の算定、3月ごとの文書提供など診療の実際にも即さない画一的な算定基準を抜本的に改め、患者の実態に合わせて必要に応じて行われた指導管理を評価すること。歯科では患者の経済的理由による治療中断が多いことなど、長期の継続管理を望まない患者に対しても、必要とされる指導管理が行えるように改めること。

 一つ一つ時間と手間をかけて行なわれている診療行為に対する基礎的技術料が長期に亘り不当に低く据え置かれている。この間の経済変動、人件費を勘案した上でタイムスタディ調査を基に、適正に引き上げること。
 実質的には評価の引け下げとなる包括の拡大を行わず、過去の改定で包括した固有の処置行為を復活し、もとの独立した点数評価に戻すとともに適正に評価すること。

(理由)

 08年4月改定では、初診料、再診料など基礎的技術料の一部がわずかに引き上げられたが、スタディモデル38年、除去33年、齲蝕処置30年、伝達麻酔・浸潤麻酔20年など大多数が長期に亘り低評価のまま放置されている。歯質を残し咬合、咀嚼機能を回復するための医療担当者の技術と労働の評価を経済変動、人件費などを勘案して正当に引き上げること。
 08年4月改定では基本診療料に特掲診療料を包括し、特掲診療料を算定した場合に基本診療料が算定できないなど医学的根拠も不明な包括が行われた。また、歯科の包括では点数を積算しないため、実質点数の引き下げとなっている。このため、包括は基礎的技術料の長期据え置きとあわせて歯科医療技術を評価を軽視したものといわざるを得ない。一つ一つ技術と労働が必要とされる診療行為が適正に評価されるよう出来高払いを原則とし、そのためにも過去に包括された項目を復活させ、独立した点数評価に戻すこと。

 「歯科診療に係る指針」はあくまでも保険診療の参考にすぎず、医療の個別性を考慮しない画一的で定型的な治療(標準治療)とするような算定基準にはしないこと。

(理由)

 08年4月改定では「歯周病の診断と治療に関する指針」「有床義歯の管理について」など日本歯科医学会による各種の指針の見直しにそった歯周病や義歯等の改定が行われた。これまでも歯科ではこうした指針が通知に反映することで算定のルールを厳しく縛る運用や審査が行われてきた。しかし、実際の診療の現場では、患者ごとに異なる医療の個別性や特殊性から、指針とは異なる診療が起こりうるにもかかわらず、保険診療の算定を認めない画一的な運用が行われている。指針はあくまで保険診療を行う上での参考にとどめ、患者の必要とする保険診療を制限することのないように審査や運用を見直すこと。

 患者への文書提供は画一的な取り扱いをやめ、患者の求めや歯科医師の判断などの必要に応じて提供するものとし、提供した場合は正当に評価すること
 医療担当者が診療に専念できるよう文書提供の簡素化とともに、指導管理、検査などのカルテ、レセプトへの詳細な記載義務を見直すこと。

(理由)

 医学管理等の算定要件とされた一律の文書提供は08年4月改定で一部改善されたが、歯科疾患管理料、義歯管理料など医学管理の新設項目では文書提供が算定要件とされている。患者や病態によっては口頭での説明のほうが患者の理解も得やすく効果的であることも考慮し、一律の算定要件とすることは見直すべきである。文書提供に関しては、文書による情報提供が必要な場合の発行とし、また、文書提供した場合は文書作成料としてこれを別に正当に評価すること。
 また、08年4月改定では、指導管理の内容をカルテ、レセプトへの記載、添付が算定要件とされ、更に、検査については全て検査結果をカルテ記載することが原則とされ、こうした煩雑な記載事項がこれまで以上に強化されている。診療に専念できるようカルテ、レセプト記載を極力簡素化するとともに算定要件にはしないこと。

6  

 高齢社会に対応した在宅医療を重視し、患者、家族の要望に医療機関が積極的にこたえられるよう、基本診療料の包括や後期高齢者への対応を制限するような施設基準は撤廃すること
 歯科往診の位置づけを明確にし、往診料を復活すること。

(理由)

 高齢社会の進行に伴い歯科の在宅医療の役割はこれまで以上に求められているが、歯科在宅医療の現状は大きく立ち遅れている。歯科の在宅医療は歯科医療機関の2割弱しか取り組まれていない。その原因は歯科の在宅診療はボランティアと指摘されているように在宅診療に対する低い評価がある。ところが08年4月改定では歯科訪問診療料を算定した場合、初・再診料を算定できなくするなどこれまで以上に評価を下げたため、積極的に在宅を行いたいという医療担当者の意欲を低下させてしまった。また、後期高齢者の在宅医療を支援する「在宅療養支援歯科診療所」は、施設基準などハードルが高く設定されたため、これまで在宅歯科を行っていた歯科医療機関の多くが同支援診療所となれず、更に高齢者の口腔機能管理料の評価をこれまでの半分以下にまで評価を下げたことから、後期高齢者の在宅医療の確保が困難になっている。
 以上のことから、立ち遅れている歯科の在宅医療を高齢社会の進行に対応できるようにするために初・再診料への包括を取りやめ、高齢者の口腔機能管理料評価を従前に戻すなど医療機関が患者の求めに応じて積極的に対応できるよう抜本的に改めること。

● 歯科診療報酬点数表に沿っての個別要求

1 初診料(A000)、再診料(A001)

(1)

 初診料、再診料を医科と同評価に引き上げること。

(理由)

 医科歯科格差を是正すること。

(2)

 過去の改定で初診料、再診料に包括したラバーダム防湿法、歯肉息肉除去術、口腔軟組織の処理、口角ビラン処置などの診療項目を復活すること。

(3)

 地域歯科診療支援病院歯科初診料は、施設基準を緩和し点数を引き上げること。

(理由)

 病院歯科が担っている二次医療機関としての機能を正当に評価すること。

(4)

 歯科外来診療環境体制加算は、初診時のみでなく再診時にも認め評価を引き上げるとともに、施設基準要件の見直しをおこなうこと。

(理由)

 外来環の主旨は評価できるものの、施設基準要件のハ−ドルがあまりにも高く、現実には、医療機関において取り組みたくてもできない状況にある。また、外来環本来の主旨を考えると、初診時のみではなく、再診ごとの加算とするべきである。

2 特掲診療料全体

(1)

 乳幼児に対する特掲診療料の50/100加算を6歳未満に戻すこと。

(理由)

 乳幼児に対する加算は基本診療料では6歳未満であり、特掲診療料だけ5歳未満とする根拠がない。

3 医学管理等(B000〜B012)

(1)

 感染予防対策管理料を復活させるとともに、施設基準ではなく全ての歯科医療機関で算定できるようにすること。

(理由)

 小手術の連続である歯科医療の特性から院内感染防止費用を考慮すること。

(2)

 医学管理等の詳細なカルテ、レセプト記載を算定要件としないこと。

(理由)

 診療に専念できるようカルテ、レセプト記載事項は極力簡素化することが必要。

(3)

 患者への文書提供を算定要件としないこと。診療上の必要性により文書提供を行った場合に適宜算定できるよう文書提供料を別途設定すること。

(4)

 医学管理については、年齢による疾患の特性を考慮し、従前の歯科口腔衛生指導料、歯周疾患指導管理料、歯科口腔疾患指導管理料を復活させること。

(理由)

 本来、患者の年齢、疾患の病態等によって、行うべき指導管理は全く異なっている。また、長期の継続続管理を望まない患者にも必要とされる指導管理を行えるようにするなど臨床の現場に即した指導管理料に抜本的に見直すべきである。

(5)

 義歯管理料(B013)は、有床義歯の調整と指導管理を別々に評価し、有床義歯の調整については回数制限を設けないで、必要に応じて行ったものはそのつど算定できるようにすること。また、1月以降の評価を下げないこと。

(理由)  患者の求めに応じて、月に複数回行っても1回しか算定を認めないのは実態に反している。実施したつど算定を認めるべきであり、また、1月以降の評価を下げる根拠がなく不合理である。
(6)

 歯科衛生士の技術と労働を適正に評価するため歯科衛生実地指導料(B001-2)を引き上げ、訪問衛生指導に準じて月4回の算定にすること。

(7)

 実地指導(歯科衛生実地指導と同等)を歯科医師が行った場合の評価を設定すること。

(8)

 「C選療」は廃止すること。フッ化物の局所応用は齲蝕治療歯数の多寡によらず保険導入すること。

(理由)

 齲蝕多発傾向者とその他を分ける根拠はない。

(9)

 歯科特定疾患療養管理料(B000-4)は、歯科疾患管理料(B000-4)との別途算定を認めること。また、共同療養指導計画加算について文書提供を算定要件としないこと。

(10)  肺血栓塞栓症予防管理料(B017)は、評価を引き上げること。
(11)  ニコチン依存症管理料については、施設基準を改め、歯科医師も行えるようにすること。
(理由)

 禁煙による効果は、歯肉の状態の変化を患者自身が目で見て実際に確認できることから、モチべ−ションには最適といえる。歯周治療のみならず禁煙指導においては、歯科医師の果たす部分があるということである。
 この管理料は、全ての医療機関において算定できるものではなく、施設基準として届出を行った医療機関においてのみ算定できるものである。施設基準ということを考えると然るべき要件をクリアした歯科医師が届出を行うのだから、なんら問題は生じない。

4 在宅医療(C000〜C006)

(1)

 訪問診療における全ての処置、手術、歯冠修復・欠損補綴については50/100加算とすること。

(理由)

 在宅診療における患者は全身疾患を有し外来診療に比べリスクが高く、一定の全身管理が必要であることを評価する。

(2)

 歯科訪問診療料(C000)T、Uとも適正に評価すること。

(理由)

 現行点数では安全かつ良質な歯科医療を提供することは困難である。

(3)

 歯科訪問診療料(C000)を算定した場合の初診料、再診料の算定を復活すること。

(理由)

 特掲診療料に基本診療料を包括する根拠がない。

(4)

 歯科訪問診療料(C000)の算定を在宅で2人目以降でも認めること。社会福祉施設等で2人目以降の算定の時間要件を廃止すること。グループホーム、ケアハウスに入所している複数の患者に対して同日に歯科訪問診療を行った場合もそれぞれ歯科訪問診療料(C000)の算定を認めること。

(理由)

  実際に訪問診療を行っているものを人数、時間で区別することは不合理である。グループホーム、ケアハウスは制度上、同一患家の取り扱いになっているが、実態に合わせて同一患家の扱いではなく、「施設扱い」とすること。

(5)

 歯科往診料を復活すること。

(理由)

 患者の求めに応じて訪問した場合は計画的な訪問とは別の取り扱いが必要。

(6)

 訪問歯科衛生指導料(C001)の時間制限、1月以内の算定などの制限、文書提供を算定要件としないこと。また、日常的口腔清掃ケアなども認めること。

(7)

 施設における口腔管理を、衛生士の配置など体制が確保できるまでは、訪問衛生指導なども含めて抑制しないこと。口腔衛生状態が全身疾患へ波及する影響が大きいことも十分考慮すべきである。

(8)

 後期高齢者在宅療養口腔機能管理料(C001-2)は、廃止すること。
 大多数の在宅歯科医療を行っている歯科医療機関にとっては、「在宅療養支援歯科診療所」の施設基準が作られたことで、後期高齢者の訪問診療がこれまで以上に困難にされた。このため、歯科医療機関が患者の要望に積極的にこたえられるよう、「在宅療養支援歯科診療所」の施設基準をなくすとともに「後期高齢者在宅療養口腔機能管理料(C001-2)は廃止し、その上で老人訪問口腔指導管理料を復活すること。

(9)

 口腔ケアを適切に評価すること。

(10)

 訪問看護指示料を算定できるようにすること。

5 検査(D000〜D100)

(1)

 全ての検査結果を詳細にカルテ記載するような算定要件をなくし、必要な事項の記載に改善すること。

(理由)

 診療に専念できるようカルテ記載は必要事項のみに簡素化し煩雑な事務を省略すべきである。

(2)

 細菌簡易培養検査の微生物学的検査判断料を包括せず、独立した評価とすること。

(3)  歯周組織検査は、同一患者の1か月以内の再検査は所定点数の50/100を100/100にすること。
(理由)

 ガイドラインに沿った治療計画に位置づけられた検査なので検査の間隔で減算する根拠がない。

(4)

 スタディモデル(D003)の評価を引き上げ、カルテへの記載を必要な事項のみに簡略化すること。

(理由)  「スタディモデルの取扱い」の「検査項目」で「検査項目は治療目的によって異なる」としており、治療目的によって記載すべき事も異なる。
(5)

 スタディモデルの保管期間を3か月程度に短縮すること。

(6)

 口腔内写真検査((D003-2)は、撮影した写真の保存を「診療録に添付」を廃止すること。

(理由)  デジタルカメラによる保存が主流になっている。
(7)  平行測定(D004)の方法は、主治医の判断によるものとすること。模型作成の費用は別途評価すること。模型についての3年間の保存期間規定を廃止すること。
(理由)  6歯以上のブリッジの場合の模型製作の費用。模型は平行測定のためのものであることから3年間保存の必然性がない。
(8)

 歯科治療時の動脈血酸素飽和度監視を独立した評価とすること。

(9)

 基本診療料に包括されたEPT検査(電気的歯髄検査)を独立して評価すること。

(10)  嚥下機能検査を新設すること。
(理由)

  摂食嚥下障害が大きくクローズアップされ、嚥下障害の診断や嚥下機能評価等が必要とされている。

(11)  皮内反応検査を新設すること。
(理由)  金属アレルギー患者への治療材料の適否判断のためには、金属パッチテストが必要である。
(12)  唾液分泌能検査、齲蝕リスク検査、歯周病菌細菌検査を適正な評価で新設すること。
(理由)  適切な診断と根拠に基づく治療のため、また患者に見てもらい判断してもらって進める治療の動機づけにも効果を発揮する。

6 画像診断(E000〜E301)

(1)

 診断料について、「写真診断の所見を診療録に記載した場合に限り所定点数を算定すること」との算定要件は撤廃すること。

(理由)

 フィルムは3年の保存義務があり現物で証明可能であるため。

(2)

 医科と同様に、全ての画像診断において同日に撮影された以外は2枚目以降も診断料の減額を行わず、所定点数での評価を認めること。

7 投薬(F000〜F500)

(1)

 薬理作用による投薬を認めること。

8 注射(G000〜G200)

9 リハビリテーション(H000〜H100)

(1)

 マイオモニターを用いた際のカルテ、レセプト記載を従来どおりに戻すこと。

(理由)

  治療の開始および終了時間、使用機器名をカルテ記載させた上で、レセプト摘要欄にも、実施年月日、時間等を記載させるのは簡素化の観点から有意性が認められないので廃止すること。

(2)

 マイオモニターを用いた際の評価を片側と両側とを分けること。

(3)

 摂食機能療法(H001)の対象を、舌小帯切除後や誤嚥防止のための咀嚼筋訓練なども対象とすること。

10 処置(I000〜I100)

(1)

 処置については、歯科の特異性を考慮して、観血的処置における感染予防対策加算を新設すること。

(2)

 処置・手術等のうち同じ診療行為については医科歯科格差を是正すること(口腔咽頭処置が算定できない、外科後処置が低いなど)。

(3)  齲蝕処置(I000)は点数を引き上げること。
(理由)

 基本的な治療として評価すべき。

(4)

 機械的歯面清掃は独立した点数として評価すること。

(理由)

 処置行為でありながら、医学管理に対する加算点数とする取り扱いには、整合性が認められない。

(5)

 歯髄覆罩(I001)の算定制限を緩和すること。また、特定薬剤及び特定保険医療材料の費用は別途算定を認めること。

(理由)  即時充填形成、インレー修復、歯髄切断を行った場合も覆罩が必要な場合がある。
(6)

 除去料は引き上げ適正に評価すること。歯冠修復物又は補綴物の除去(I019)は、同一の歯牙について2個以上の歯冠修復物又は補綴物の除去行った場合は、各々の除去料の算定を認めること。

(理由)

 異なる除去の手技や労力を適正に評価すること。

(7)

 咬合調整(I000-2)の評価を引き上げ、歯数に応じて1回限りという制限を撤廃すること。患歯の安静を目的とした咬合調整を認めること。

(8)

 レスト座形成を行った場合は独立して評価し、歯牙単位での算定とすること。

(理由)

 レスト座形成と咬合調整は異なる行為のため。

(9)

 知覚過敏処置(I002)は、大幅に点数を引き上げるとともに算定要件、回数を緩和すること。

(理由)

 当該処置に関わる技術や材料など大幅に進歩していることから、それにみあった点数に引き上げるべきである。

(10)  変色無髄歯について、歯の漂白を行った場合の評価を復活すること。
(理由)  病的な変色無髄歯に対する漂白処置は治療として必要である。
(11)

 抜髄(I005)、感染根管処置(I006)、根管貼薬処置(I007)、根管充填(I008)等の歯内療法の評価を大幅に引き上げるとともに隔壁についても別途評価すること。
 また、麻酔、特定薬剤料は別途算定を認めること。

(12)

 直接歯髄覆罩後1か月以内の減算は行わないこと。

(13)

 非侵襲性歯髄覆とうの評価を引き上げること。

(14)

 抜歯を前提とした場合の根管貼薬処置(I007)の算定基準を従来どおりに戻すこと。

(15)

 根管充填(I008)の加圧根管充填加算は、補綴物維持管理料の届け出の有無での算定制限を撤廃すること。

(理由)

 補綴物維持管理料の届出の有無で、加圧根充を算定制限するのは根拠がない。

(16)

 加圧根管充填加算についてはエックス線写真撮影を算定要件としないこと。

(理由)

  電気的根管長測定器を用いることで、必要十分な加圧根充は可能であり、根充後のエックス線写真による確認を算定要件とする理由はない。

(17)

 歯根端切除手術時に行う切除部の根管の閉塞の費用は包括せず、別途算定できるようにすること。

(18)  初期齲蝕小窩裂溝填塞処置(I003)は、点数を引き上げ包括した点数を別途認めること。
(理由)  小窩裂溝の清掃、歯面の前処理の費用を包括せず認めるべきである。
(19)  暫間固定でのエナメルボンドシステムの装着料、装着材料料は別途算定出来るようにすること。
(20)

 歯周治療用装置(I018)については、評価を引き上げ歯周基本治療の時期から認めるとともに、歯周外科手術の有無に係わらず算定を認めること。

(理由)  臨床的に妥当であることから。
(21)

 歯周基本治療(I011)について、評価を引き上げ2回目以降の30/100の減算を行わないこと。

(理由)  減算する根拠がない。
(22)

 歯周疾患処置(I010)は、平成18年4月改定前の算定要件に戻すこと。

(23)

 歯周病安定期治療(I011-2)は、必要と認められる患者には全て算定できることとし、病状に応じて月1回の算定を認め、算定期間制限を廃すること。また、点数評価を大幅に引き上げること。

(理由)   歯周病安定期治療への算定要件の設定が高すぎる。指針でも最初は1か月ごととの指摘もある。評価があまりにも低い。
(24)

 所定点数が120点以上の処置(手術)の場合の特定薬剤の包括を廃止すること。

(25)

 ラバーダム防湿法を行った場合は、個別評価としての算定を復活すること。

(26)

 床副子調整(I017-2)は評価を引き上げるとともに、調整のつど算定を認めること。

(理由)  実際に複数回調整しても月1回しか認めないのは不合理。
(27)  義歯管理料(B013)算定期間中の有床義歯床下粘膜調整処置の算定を認めること。
(理由)  管理料であることから、処置等などは認めるべきである。

11 手術(J000〜J400)

(1)  手術については、歯科の特異性を考慮して、観血的処置における感染予防対策加算を新設すること。
(2)

 同一手術野又は同一病巣で、2以上の手技を同時に行った場合も、各々算定できるようにすること。

(理由)  同一手術野でも手技が異なる労力を適正に評価するべきである。
(3)

 歯根端切除術(J004)の、歯根端閉鎖の費用は別途算定できるようにすること。また、「歯の再植による根尖病巣の治療」の対象を大臼歯に限定しないこと。

(理由)  前歯、小臼歯でも再植を選択しなければならない症例がある。
(4)

 歯肉息肉除去術を個別評価として復活すること。

(5)

 抜歯手術(J000)の点数を引き上げること。

(6)

 抜歯手術(J000)、ヘミセクション(J001)と同時に歯肉を剥離して歯槽骨整形手術(J006)を行った場合は別途算定できるようにすること。

(7)

 口腔内消炎手術(J013)の算定に際してのカルテ記載を簡素化すること。

(理由)

 部位と図で十分であり改善すること。

(8)

 口腔内軟組織にささっている魚骨を除去した場合の費用を従前通り算定できるようにすること。

(9)

 咽頭部、扁桃部に及んだ場合の除去の費用が算定できなくなっており不合理である。医科準用点数として復活すること。

(10)

 歯周病組織再生誘導手術は評価を大幅に引き上げるとともに、必要に応じて骨代用物質を填入した場合は、別途算定できるようにすること。

(11)

 外科処置時に使用する縫合糸・針の材料代を個別に評価すること。

12 麻酔(K000〜K200)

(1)

 伝達麻酔(K000)は、評価を大幅に上げること。

(2)

 浸潤麻酔(K001)は評価を上げると共に、所定点数が120点以上の処置などの場合も包括せず算定を認めること。

(3)  静脈内鎮静法(K003)は評価を引き上げること。
(4)  薬剤の算定に際して「薬価から40円を控除」する取り扱いを廃止すること。

13 放射線治療(L000〜L003)

14 歯冠修復及び欠損補綴(M000〜M100)

(1)

 歯冠修復・欠損補綴並びに補綴関連の技術料を引き上げ適正に評価すること。

(2)

 有床義歯についての、6か月以内の再製作の禁止通知を撤廃すること。

(3)

 補綴時診断料(M000)は評価を引き上げ1装置ごとの算定とし、2回目以降も算定を認めること。

(理由)

 診断の都度、補綴時診断料を算定するのが治療の進め方の基本である。症例によっては時期を異にして個々に作製したり、口腔の状況が変化して新たに着手する症例があるのに、それらの場合に算定できない取り扱いは医学的に妥当ではない。

(4)

 補綴物維持管理料(M000-2)については廃止し、診断や印象採得、咬合採得等の技術料を大幅に引き上げること。補綴物と補綴歯の継続的な監視と患者が良好に口腔を管理するための指導管理として、本来の意味での維持管理ができるよう装着後の管理料を設定すること。また、補綴物維持管理の期間中であっても隣在歯の抜歯等により同一の補綴物の再製作ではない場合は、製作費用を算定できるようにすること。
 また、実態の伴わない施設基準を廃止し、未届け医療機関の30%減算は取りやめること。
 医療機関単位でなく症例毎の算定を認めること。患者の外傷などによる補管算定補綴物の破損は再製作の費用を算定出来るようにすること。

(5)

 支台築造(M002)は、その後の歯冠修復がインレーや4/5冠であっても算定できるようにすること。また、窩洞形成、装着等の費用は独立して評価すること。

(6)  スクリューポストの挿入をレジンコアの算定要件としないこと。
(理由)

 歯質の状態により、スクリューポストを挿入しないほうがより長持ちする症例もある。

(7)  支台築造印象(M002-2)の評価を引き上げること。
(8)  齲蝕歯無痛的窩洞形成加算、接着ブリッジは評価を引き上げること。
(9)  包括評価を改め個別に評価すること。
  ア

 歯肉圧排、歯肉形成、研磨、特定薬剤等は包括でなく別途評価すること。

  イ

 テンポラリークラウンを評価すること。咬合関係の維持などの観点から、部位や歯冠修復物の種類にかかわらずテンポラリークラウンの算定を認め、適正に評価すること。作製に使用する材料についても算定できるようにすること。

(理由)

 テンポラリークラウンは前歯でのみ必要なものではなく、臼歯部における咬合関係の維持や歯の移動の防止など、部位によらずに必要とされるものである。さらに、テンポラリークラウンの作製には、材料が必要であり、かつ、時間と労力が相当かかることから、適正な評価が不可欠である。加えて、テンポラリークラウンに対する患者からの要望も強く、抜本的な改善が必要である。

  ウ

 補強線、ろう着、遊離端加算、咬合採得の困難加算などの費用を復活させること。

(理由)

 補強線については、安価なものではなく、実際に使用することで義歯の強度がアップし、短期間での再製作を避けられるなどメリットが大きい。別途算定を認めるべきである。

  エ

 有床義歯作製時の作業用模型は別途評価すること。

  オ  印象採得の困難加算を復活させること。
(10)

 充填(M009)は、エナメルエッチング法、エナメルボンディック法の加算を復活すること。

(11)

 メタルコアは、評価を引き上げ、包括された形成料、印象料、咬合採得料、築造体製作料、装着料、セメント料などを、それぞれ個別の行為毎に算定できるようにすること。

(12)

 前装鋳造冠(M011)を小臼歯まで認めること。

(理由)

 強度的および審美的観点から前装鋳造冠は小臼歯まで算定できるようにするべきである。

(13)  乳臼歯、大臼歯の単冠での4/5冠を復活すること。
(理由)

 無駄な歯質の切削を減らす必要がある。歯科医師の裁量に任せるべきである。

(14)

 健全歯質を残す観点から4/5冠とインレーの間の治療評価としてアンレーを新設すること。

(15)

 歯冠継続歯(SK)は廃止した点数を復活すること。

(理由)  咬合関係よりSKにせざるを得ない症例が臨床ではある。
(16)

 装着材料料Tは点数を引き上げること。

(17)

 保持装置は、バーへの装着の場合のみ加算が認められているが、床義歯の孤立歯部にも認めること。

(18)

 有床義歯の調整料を新設し、1装置単位で調整のつど算定を認めること。

(19)

 治療用の仮歯を新設すること。 前歯の歯冠修復物・補綴物のダツリ、紛失などに伴い根管治療が必要な場合など仮歯を評価すること。

(20)  暫間義歯を保険で評価すること。
(理由)

  早期(即時)の機能回復(審美回復)が求められる。治療を進める上で現行制度では対応が難しい。暫間的に義歯を入れ、治療終了後再度義歯製作を認めることが必要。

(21)  義歯製作のため製作した作業模型を認めること。
(理由)  患者の口腔内状況を診査する以外でも、歯科技工物の製作に必要として製作(個人トレーなど)した場合も評価すること。
(22)

 自費補綴物の修理・再装着については保険給付とすること。

(23)  歯科技工士の技術と労働の評価を適正にすること。
(24)  技工指示書の評価を行うこと。
15 歯科矯正(N000〜N100)
16 保険外併用療養
(1)

 金属床総義歯は選定療養から全額保険導入とすること。

(2)

 C選療は廃止すること。

17 その他
(1)

 施設基準 第79の2「患者への説明を要する全ての手術とは、手術の施設基準を設定されている手術だけでなく、当該医療機関において行なわれる全ての手術を対象とする」との取り扱いは診療現場の実態とかけ離れた運用で、患者も全て望んではいないことから、施設基準として届け出た手術に限定すること。

(2)

 施設基準 第87 顎口腔機能診断料 (2)のアの下顎運動検査機器について
 薬事法上、クラス2(管理医療機器)−歯科用下顎運動検査機器は「顎関節の異常を診断するために下顎運動を電気的に測定する機器をいう」と定義づけられている。ほとんどの矯正歯科が施設基準として届出して使用していた機器は、機械式のクラス1に分類されているものであったが、何の問題もなく、臨床において使用されてきたものである。
 機器について、機械式と電気式の優劣の違いについて、明確なエビデンスが存在しない現状において、これまでの臨床実績を踏まえ、機械式のものについても、下顎運動検査機器としてクラス分類するべきである。