歯科医療を制限する「管理」路線を撤回し、新設・改廃項目の論拠を示せ
08年4月から実施される診療報酬改定内容が答申された。
協会が厚労省に要求してきた、初再診料引き上げや文書提供の要件緩和、新規技術の保険導入などが一部取り入れられたことは評価するが、あまりにも点数が低すぎる。また、新設や改廃された項目の根拠も不明確である。厚労省は、エビデンスを明確にし、論議の過程を詳しく示すべきである。算定要件でも、歯科衛生士の配置や医療機器の設置を条件づけたり、新たな治療指針(ガイドライン)による強引な管理指導路線が敷かれている。これに乗れない医院を保険診療から閉め出し選別淘汰する仕掛けである。診療報酬本体の改定率は、公称0・42%だがプラスになるという実感が持てない。
医学管理料では、P管理・口衛指などが廃止され「歯科疾患管理料」に無理やり一本化された。今までは患者の主訴に沿って疾患別に指導管理ができていたが、これからは、1口腔単位で全ての疾患を患者に明示して、治療するのか否かを尋ねて、同意を得るシステムに変わった。管理計画の「あり」、「なし」のグループに患者を分けることになり現場に混乱をもたらす。
歯周治療には、「病状安定期治療」を治癒に導く過渡期の治療として新設したが、中等度以上という制限がある上に1月あたり150点という低点数である。しかも、3年間で給付が打ち切られる。疾患の個別性や患者の個体差を無視した年限制である。
有床義歯の調整指導は、新製から1年以内を3つの時期に区分し「管理」の考え方が強調されている。特に「有床義歯長期管理料」は長期管理とは名ばかりで、現行の調整料と同じ1月あたり、わずか60点で賄わせている。そして、1年超の調整指導料の扱いは不明のままである。
歯周治療と有床義歯調整の改変は、日本歯科医学会が改定したガイドライン・治療指針に基づいている。現行のガイドラインは審査や個別指導の現場では、査定するためのルールとして運用されている。医科のように、ガイドラインはあくまで治療の参考にとどめるべきである。
往診に至っては訪問診療料に初再診を包括するという荒業まで使い、さらに、「在宅支援歯科診療所」という新たな施設基準の足かせをはめて算定制限をしてきた。
その他、包括化を名目に、固有の治療行為の評価を減らしている。初再診料にラバー加算や歯肉息肉除去術を含めたり、充填から研磨までを一括りにするなど、医療費全体を引き下げながらオンライン化の準備を整えつつある。
包括評価は、術者と患者の双方にとっては分かりにくい体系である。やはり、出来高払による個別の評価に戻すべきである。
以上、今回の改定は、患者の求める歯科医療の質を確保し、医療機関の窮状を改善するには程遠い。協会は、診療報酬の引き上げ・総枠拡大を求めながら、治療費の心配なく、いつでも、どこでも安心して歯科医療にかかれる制度の実現に向けて一層運動を強めたい。
2008年 2月18日 大阪府歯科保険医協会 社保研究部長 吉田 裕志